ミニ講座:ランドリーの品質決定要素

クリーニング業は衣類等に付着した「汚れ」を取除いて、元の姿に復元する作業を請け負っています。

ここで「汚れ」とは何かというと、衣類等に本来付着していなかった異物です。

クリーニング業はこの異物を衣類から離す作業なのです。

付着しているものを離すには何が必要でしょうか?  そう!力です。皆さんは日常、付着したものは力を加えて引き離すのが普通です。クリーニングの場合はそれ以前に溶解と云う科学の作用を加えます。

「異物」は溶解性から水溶性、油用性、不溶性のどれかに属しており、溶解させると、容易に隔離させることができるからです。

ここで溶解性について考えて見ましょう、水溶性のものは水に溶け、油溶性の異物は油脂や洗剤の力を借りて衣類から離れやすくすることができます。では、不溶性の汚れはどうでしょう?

溶けないのですから離れないとお考えでしょうが、運良く、この種の汚れは単独では付着力が小さく、容易に剥がれたり(頭髪等)、油に包まれて付着する(泥や煤)ので、油脂と一緒に離れるチャンスがあり、このチャンスを逃さず再び衣類に近付けなければ完全に離すことができるのです。

 

ランドリーでは、科学の力として、水、洗剤、アルカリ剤を使用し、物理的な力を機械に頼っているのです。この作用を有効に働かせるために、以下要素を調整・駆使します。この内容は先ごろ毛利春雄氏が販売された電子図書「ランドリーの実務の品質管理」実務を取り入れさせていただき筆者なりの解説をしたものです。

”知らないものが余計な事を”と云われそうですが、こんな解釈する人もあるのだと思って頂ければ幸いです。

 1,負荷量  目安は一般に65kg/(米式)とされており、現在でもこの数値が独り歩きしていることが多いのです。考え方としては間違っていませんが、現在の衣料事情からは、若干の修正が必要になっています。即ち、最高の洗浄効率に寄与する負荷量の根拠は、ワッシャー内で、濡れた洗濯物がリフターから落下する際、正面から見てドラムの中心点を通過するのが理想とされているためです。

 この状態を作り出す洗濯物の量は綿100%の場合は乾燥時でドラムの8分目まで満たす量であり、これに水を加えることで洗濯物が吸水して水位が中心点に達する位置になり、この状態でドラムを回転させると理想の位置を通過して落下すると云う結果に繋がるのです。(左写真が混紡シャツならこの状態が適正です)

この処理量を綿ワイシャツで示すと1枚約250gJIMS20kgのワッシャーには1度に80枚処理可能ということになります。

処が、1950年台にポリエステル素材が量産体制に入り、ランドリー対象の洗濯物に加わると事情は変わってきました。綿は親水性素材の為、吸水して嵩が小さくなりますが、ポリエステルは、殆ど水を吸わないため、嵩の減り方が小さいのです。その分を計算してワッシャーへの投入量を減らさなければなりません。減らす量は、ポリエステルシャツの量、混紡率で異なりますが、綿ポリ6535混紡のワイシャツの重量は210~220gなので、重量計算で行くと一度に90枚処理できる計算になりますが、これでは過負荷になってしまいます。同じ結果を出すためには逆に、1617kg(約75枚)しか入れることができない計算になります。

 特に、ロットシステムを採用している場合、枚数に半端が出ると過負荷になり、適正な負荷量を維持することが困難になります。この辺の調整はダミーを使用することで解決するはずですが、とかく過負荷の稼働で進行させる傾向が出ているのではないでしょうか。この場合、過負荷の許容範囲がどの程度であるか計測して調整しましょう

尚 欧州は機械作用を摺動と捉えているため負荷量を 7585/3と位置付けているそうです。どちらが汚れ除去に有効か考えて見ましょう。

 

2. 機械的 要因  機械設備の買い替えは頻繁ではないので、課題となる要素は購入時のチェックポイントとして気付いた時にメモしておくことをお勧めします。

また、インバーターなどで調整可能な部分もあり、大物処理などでは変更要素となります。 

 ワッシャーの 回転数  現在の洗濯機40~45/分 大物を洗う時は回転数を変えます。

落下位置が円の中心を通る速度が良いとされています。

回転数が多いと即、叩き効果増となり、洗浄時間短縮がかのうとなります。   

内胴の形状  おなじJIMSでも直径(落差に影響)と奥行きの違いで、洗浄効果が変わってきます。 オープンエンドの場合支柱は1本なので直径が大きければ負担が掛かることは事実です。  

    桟 の 形状   回転数が高いと落ちにくくなるので低くする。

低いと壁面を滑るので高くする。傾斜にも落下の角度が影響するので購入時は

適切であるかを確認が必要でがあります。 

    内 胴の直径  落差に影響し、大きすぎると洗浄力は高いが、ボタンの破損に繋がります。

内 胴の形状  パンチングの状態でファスナー等のキズ・破損が発生すると云った注意事項もあります。

       ワッシャーのドアを開いた突き当りの平面を鏡板といい、鏡板の裏側にはドラムを支える支柱があります。支柱はドラムを1本で支えているので補強が必要で補強を取り付けると鏡面中央に突起ができます。鏡板の形が平らだと衣類の絡まりがないので傷みが少ない上、解す手間がないのですが。支柱の補強のためとはいえ、内側に突起があると洗濯物が絡んで生地を傷める上、解す西館を要します。

この様に、形態はメーカーによって異なります、購入時はよく確認しましょう。

 

3. 工程上の要因    前処理の有無。高品質を目指すなら欠かせない作業です。効率よく行いましょう。  

    本洗     回数 と 時間 の調整(2回が理想)   

  すすぎ     回数 と 時間の調整(短くても回数を増やす方が完璧に濯げる)

4.  資材・材料の 要因 

水質    地下水は勿論、水道水も地域によって成分が異なります。一度は水質検査も行って

おくと安心です。

   洗剤・助剤   同じように見えても価格差が質に関わって来ることがあります。使用量を節約すると、洗浄効果に響きます。  品質を下げるより、正確な計量をお勧めします。確認テストも大切です。

  その他の薬剤    折角研究会委に参加しているのですから、購入前に、その効果を確かめましょう。

           情報交換や会としてちょうさするのもよいですね!

5.  設備的な要因 ・・・時間の無駄を省くことができるので、吸水・給油タンク設置は重要です。

    給水( 水 タンク 設備、 配管 径) の 速度    

     給湯( 湯 タンク の 設備、 配管 径) の 速度 

  設備投資が必要であっても効率で挽回できることは実行することが大切です。

 

  自社工場を建設の際は、上記の要素についても考慮することをお勧めします。